2011年4月 3日 (日)

「我、電子書籍への抵抗勢力たらんと欲す」を読んで

Nknshi
印刷学会出版部 刊 
四六 208頁 並製
1600円+税
ISBN978-4-87085-200-6 C0070 \1600E

京都の老舗の印刷会社 中西印刷の元「若旦那」(専務取締役)である中西氏の著作です。2010年7月が初版、私が買ったのは8月の第2版でした。「活字が消えた日」「印刷はどこへ行くのか」等の著作の延長にある、エッセー的な内容です。

が、しかし出版印刷に関係する人なら思わず苦笑せずにはいられないでしょう。
印刷とは言っても広告やカタログ、パッケージやシールなどその用途は多種多様ですが、こと出版印刷にかんしては、電子書籍と印刷の行く末について誰もが考えているのではないでしょうか。
もちろん、そこには答えはないのですが、産業として生き残りをかけていくからには本書の表題にある「我、電子書籍への抵抗勢力たらんと欲す」という強い決意が必要です。印刷そのものは無くなることはないでしょうが、業態はかなり異なったものが必要とされると思います。それがフルデジタルでありオンデマンド印刷であるというのが今の一番近い答えかもしれません。それでもこれからもっと変わっていく気がします。

「大量印刷の落とし穴」ということも氏は指摘されていますが、私は環境問題の面からも紙の使用は制限されて行くのではないかと思います。そうした事態にも耐えうる産業構造を日本にもつくらないといけないのでしょう。新聞やその折り込み広告、雑誌やカタログなどが見直される時代がくるのではないでしょうか。

この震災による資源・電力不足でいろいろなことが見直されています。出版社が様々な形で電子媒体を通じて、この震災による印刷・出版・流通の困難を乗り越えようとしている努力は素晴らしいことだと思います。放射能や原発に関する書籍の一部を無料で公開したり、読めなかったコミックをデジタルで公開したり、今までできなかったこんなことが出来るようになったという実例として、とても感心しています。

また、本書の印刷通販にかんするくだりがとても面白かったです。検索や顧客ニーズといったインターネットとの関係もこれらの印刷会社にはきってはなせません。中西印刷でのとりくみをおもしろおかしく書いているので、必読です。

あと、本書の内容を補足するうえでも以下の両サイトも参照されるといいでしょう。

中西氏のブログ
フロム京都
http://olj.cocolog-nifty.com/weblog/2010/03/post-0618.html

ebook2forum 鎌田氏のブログ
E-Bookとデジタル時代の印刷業<解題>
http://www.ebook2forum.com/2010/03/ebook-and-printing-business/

0回~6回の議論になっています。

 

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2011年2月13日 (日)

電子書籍で生き残る技術 −紙との差、規格の差を乗り越える−

Denshi
オーム社eStore(β)でPDF版書籍データが購入できます。もちろん紙判も。

http://estore.ohmsha.co.jp/titles

電子書籍の今後の普及を考える時に、まずこれまで絶対に必要であった「印刷」「流通」「印刷用紙」といったものの登場がなくなり、それにともなって編集やデザイン・レイアウトといった分野でもこれまでと違ったワークフローが登場してくるのは必然です。

本書はそうした未来をみすえて現状ですすめられているワンソースマルチユースなワークフローを参考にしながら、出版のありかたの変化も期待していると思います。自分も、写植や電算写植、そしてDTPという文字組の世界に生きてきているので、かつての苦渋に満ちた文字修正から解放され、まさにとびきり自由なDTPの世界の登場に喜んだものです。そして、いま、それは出版という行為そのもののワークフロー全体をも射程においた変化が期待されているのだと思います。電子書籍の普及を考えるならば、出版ワークフローのより合理的な変化は必要だと思います。全部の雑誌や書籍がこれに該当するというのは無理ですが、少なくとも書籍類についてはかなりの労力の削減が期待できると思います。

まず、わたしは本書をオーム社eStore(β)から購入しました。この(β)というサービスを知ったのは開始直後でしたが、その時、内容的には「PDFデータの販売(紙判も同時に購入できますが)ぐらいなのか」とちょっと期待はずれな気もしたのです。しかし、本書を購読して読み終えた後では、(β)の意味も少し期待できるのかなと思いました。本書自身がそうした新しい出版ワークフローの体現でもあるのが理解できました。

PDF判のダウンロードにはDRMもなく、PDFのセキュリティ設定もないのです。これには最初びっくりしましたが、購入したPDFにはフッターとして購入者の氏名やメールアドレスが自動的に表示されているのです。確かに、これで事実上の購入者の良心に期待するセキュリティにはなると思います。購入者のデータを扱う立場にたてば非常に扱いやすいものだと思います。こうしたPDFの配信も試行のうちのひとつだと思います。

デジタルネイティブの世代がこうした未来へ変化を期待するのは当然でしょう。ネットワークはもう特別のものではなく、道路や水道、鉄道などのインフラと同様にすぐそこにあるものなのですからね。これまでもXMLを利用した自動組版はいろいろとありましたが、電子書籍の時代にはもっと重要なソースとして、バージョン管理、データ更新等を含めた新しいワークフローの到来を本書は期待していると思います。DTPや出版にかかわる方は是非ご一読をお勧めします。

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2010年12月10日 (金)

eBookジャーナルがわが町の本屋にありました

Ebookjnl
電子書籍元年といわれた今年は、そして来年は電子書籍から目が離せないでしょう。

買い物帰りに久しぶりに立ち寄った町の本屋さんでeBookジャーナルを見つけました。
内容はよくまとめられており、DTPをやっている私どもにとって、今、知っておきたいことをほとんど網羅しています。隔月発行のようです(年6回、奇数月)。

創刊記念として定期購読キャンペーンもやっているようです。ペーパー版と電子版があります。Fujisan.co.jpで申し込むと、ペーパー版に電子版が無料でついてくるらしいです。

それに巻末には電子出版対応制作会社リストも掲載されています。かつてのDTP雑誌と似ていますね。

ところでPage2011のアナウンスがされています。
http://www.jagat.jp/content/view/2511/

「ゼロリセット」「新生グラフィックビジネス」「情報デザイン新時代」ときているわけですが、印刷需要が減ってきている中で

印刷業が出来ること(印刷業の得意分野)を再度考え直してビジネスを再構築しなければならない

という流れで、印刷会社もいろいろと情報発信していかなければいけない時代となっているわけです。ワークフローのデジタル化は当然として、その上で自社の強みをどう構築していくのかという段階へ移行しつつあります。いやー、これが「普通」の水準ですから、きびしいですね。

2/3(木)は「激論 電子書籍の抵抗勢力vs.推進勢力!」はおもしろうそうですね。電子ジャーナル、学会誌制作の推移をみれば、今後の電子書籍のありかたについてもいろいろと考えさせられる内容かと思われます。ここでもやはり検索やネットとの連携がキーになっているような気がします。

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2010年5月 5日 (水)

日本でいちばん大切にしたい会社

Asapub
日本でいちばん大切にしたい会社 坂本光司著 あさ出版

私が手にした第1巻はもう54刷です。この本が35万部も売れている日本もまんざらではないと思いました。生産性や効率化、市場競争一辺倒になっている今の会社経営には、こうした価値を優先する会社もあるんだと感心するばかりです。しかも会社の経営規模や売上も立派ですからなおさらです。連休前にせきで体調を崩していたこともあり、このGWにこの2冊を読むことが出来ました。

業績ではなく継続できる会社をめざして行う経営の基本として
1.社員とその家族を幸せにする
2.外注先・下請け企業の社員を幸せにする
3.顧客を幸せにする
4.地域社会を幸せにし、活性化させる
5.自然に生まれる株主の幸せ
という5つの会社が本当に大事にすることをあげています。

1巻と2巻で合計13社を具体的に紹介して、各社の経営のあり方やなりたちを紹介しています。5人の家族経営の会社から従業員700人を超える会社まで、その経営は様々です。でも、活力のある会社としていずれも有名であり、魅力のある会社になっていることは共通です。

日本の中小企業は本当に立派な会社があると思いますし、これがかつての「日本的経営」のいい部分であったのだと思います。そうした価値を再確認して、会社経営や社員のありかたを考え、日本を元気にするよい本だと思います。

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2009年11月30日 (月)

「校正のこころ」読みました

Kousei
校正のこころ 積極的受け身のすすめ 大西寿男著 創元社

 この本が校正について書かれていることは書名からもおわかりになるところですが、実際にこの書籍を手にしてみることを是非おすすめします。装丁やカバー、帯などをはじめ、本の構成としても実に丁寧につくりこんでいるからです。
 さて、本書は校正という仕事を再認識させてくれるとともに、著者が自らの経験を元に考えられてきた「校正論」ともいうべき、校正という仕事についての原則や役割について整理されています。そこには今、デジタル社会の中で進行している本づくりという仕事にかかわる方々が感じている様々な問題や解決すべき課題も述べられていて、また著者の悩みや「ことば」に対する悲しみや喜び、そのことが著者を大きく動かしていることが読み取れます。
 副題としてある「積極的受け身のすすめ」は著者の校正者としての姿勢だけでなく、生き方としても受け取れますし、その結実が本書となっているといえます。
 出版や本づくりにたずさわる方は、いがいがするノドをスーと潤す清涼剤となると思います。
 本の最後には、「校正のためのQ&A」や注、参考文献、図版出典一覧なども丁寧にいれられているのも、また楽しいものです。

 さて、冒頭の「はじめに」では筆者は次のように語っています。

二一世紀を迎え出版界では空前の自費出版ブームが沸き上がっています。インターネットの世界では、いっそうすさまじい勢いで、ブログやホームページが日々、開設され更新されていっています。個人が情報を与えられるだけでなく、みずから発信していく時代がいよいよ到来したのです。

 そうなんですよね。現代は紙からデジタルへメディアの移行が劇的に進んでいる時代なんです。出版という意味を「出版社もだめだね」と狭く捉えてしまいがちですが、それは出版社が今までつくりあげてきたビジネスモデルが通用しなくなっているのであって、出版という行為自身がダメになっているのではないということです。これほど出版されている時代はかつてなかったのです。
 であるがゆえに、言葉の持つ「ちから」についてもっと心をつかわないといけない、「校正のこころ」が今こそ必要とされているということです。デジタルでも紙媒体の書籍でも「校正のこころ」が大切であると。
 デジタルにはまだ書籍のような確固とした「カタチ」は定まっていません。用途に応じて如何様にでも変容するのがデジタルなのかもしれません。この書籍のような味わいと構成を体現できるインタフェースや媒体もいつかは誕生するかもしれません。そうなったらすばらしいですね。

ちなみにこの書籍の組版についてはコチラに詳しくあります

http://d.hatena.ne.jp/works014/20091119

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2007年5月10日 (木)

「食品の裏側」を読んで

Shokuhin
安部 司著 食品の裏側 読んでおきましょうね

食育がとても大事な時代になっています。みんなで「いただきます」って、言って食べる食卓というものがなくなってきていますし、手づくりで食事を楽しむことすら、忙しさの中で忘れ去られて来ている時代だからです。子どもらですら、部活だ、塾だ、文化祭だといって、忙しく、家族みんなが顔を合わせて、「いただきます」っていっている食卓がどれだけあるのか? いつも手づくりでなくてもいいでしょう、でも「いただきます」ぐらいはちゃんとしたい…というのはわがままでしょうか?

だからみんなで時間をつくって、「いただきまーす」っていう食事の時間をつくることはとても大切なことです。働いてお金を稼ぐのと同じぐらい、大事です。

この本を読むとショックです。食品の現実も科学と化学が発達した現在、恐ろしいことになってきているんだろうな~って思っていたのですが、やっぱりすごいです。でも、きちんとそういう時代に、どう付き合っていくのかということもきちんと言及している点がいいです。

食品添加物の「神様」のような著者が書いているのですから説得力があります。現場を歩いてきた著者だから、とてもわかりやすく簡単に書いています。消費者が気を付けなければ行けないこと、学校で教えてほしいこと、食品添加物とどう付き合っていくのか等々、あっというまに読めてしまいます。通勤の往復時間で3日あればよめますから、ぜひ一読をおすすめします。

読み終わって、家族にも読むようにすすめました。「いただきます」の大切さと、ありがたさ、毎日手づくり御飯が食べられるありがたさが、てとも分かります。

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2006年12月19日 (火)

進化する紙メディア

Kamimedia
進化する紙メディア 赤羽紀久生著(発行:宣伝会議)

サブタイトルは「デジタルワークフローはコミュニケーションを変える」です。
出版・印刷(広告)にかかわる人ならば、この本は必読です。印刷・出版の長期凋落傾向の中で悶々としている「あなた」は、特にそうかもしれません。
 まず、本書は「紙」メディアにかかわっている人の立場でかかれています。関係者が読むと、少しだけ気持ちが明るくなれるという副作用もあります。
 ずっとすっきりしなかったこの業界のわだかまりをすっきりとさせてくれます。幾度も、「そうそう」「そうなんだよな~」と。
 ま、でも明るい未来が何もしないで手にはいるわけではありません。そこには厳しいメディアウォーズがあります。メディアの融合はもっと進むでしょうから、どのようなビジネスモデルが考えられるのか、それを可能にするデジタルワークフローは何か、などなどこれからの仕事を考える上で、ヒントになることがたくさんかかれています。
 コンテンツ-デジタルデータ作成、そしてコミュニケーション、最終的なアウトプットと各ステージの責任と範囲を明らかにして、業界の革新を提案しています。
 わくわく、どきどきしながら読むことができます。

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2005年9月25日 (日)

仕事は思い切って楽しもう

richard
小さいことにくよくよするな!(3)「仕事はこんなに楽しめる」

 9月は季節がら体調が悪いのですが、8月までの仕事のペースが一段落して、気を抜いていたこともあってブルーな気分が続いています。それもこれも天候不順に体がついていっていないので、ひたすら会社へ行ってその日の仕事をこなして帰宅すると疲れてしまっているようです。と思っていたら、月末へ向けてまた忙しくなってしまいました。
 まあこうした時は本でも読んで、頭を切り換えましょう。今は通勤1時間なので、約40分ほど読書できます。それで、ぜひお勧めしたいのが「小さいことにくよくよするな!3」です。忙しい毎日を送っているあなたに、ちょっとした気分転換をもたらしてくれます。自分がいままで仕事をする上で感じてきていたことをスッキリとまとめ上げ、その対処のハウツーを簡潔にいってくれます。一番いいのは、どの文章も2ページほどでかかれているので、読みやすくて頭に入りやすいことでしょうか。それにしても、世界中でベストセラーのこの本、同じ事で悩んでいるヒトは多いんだなと思いました。気がついたらシリーズ3冊目を今読んでいます。

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2005年7月30日 (土)

子どもに伝えたい<三つの力>

kuro
クロアゲハが遊びに来ました

最近はビジネス書も多数執筆されている斉藤孝さんの『子どもに伝えたい<三つの力>』 という本、サラリーマンが読んでも面白いのです。自分の子どもたち、いまを生きる子どもたちの環境を考えてみると私たちが育った時とはほんとうに時代が違うということの認識が必要です。それに、「じゃどうするか」ということも。文部科学省の「生きる力」という抽象的なテーゼに対して斉藤さんが提案したのがこの三つの力です。
「まねる盗む力」「コメントする力」「段取りする力」の三つです。これを心と体の両方で理解して実行できれば、もう一人前です。子どもたちとどう向かい合うのか、理屈だけでなく、体をつかって一緒に行動することではぐくまれる力と言えるでしょう。逆に言えば、今の社会環境(学校や家庭や地域)には、それを自然にはぐくむ力がなくなっているともいえます。私たち大人が十分に気をつけて行かなければいけないことです。
そして、それは今の自分たちの仕事の上でも同様です。「熟練」や「巧み」の技が解体し、デジタルの時代だからといっても上の三つの力が基本なことは変わりません。

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